孤独の部屋

   孤独の部屋

 私は二、三日前からここで暮らしています。ここは備後《びんご》の南端にある、小さな港です。私は深い淵《ふち》のように湛《たた》えた海にのぞんだ、西洋風の部屋を約束しました。この部屋から見ると静かな湾は湖のように思われます。向こうの方に眠るがごとく薄々と横たわった山脈の空は、透き通...

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退学直後

 大正三年(一九一四)

   退学直後

 あなたはどんな正月をしましたか。私には色も香もない正月が訪れました。東京から下って来た妹と語る言葉さえ少なく、静粛な平和な初春を迎えました。六日の一夜風の寒い神戸駅から淋《さび》しそうにして妹が立ってからはまた急に淋しくなりました。しかし私は淋しさにはな...

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友情のために

 青春においては、むしろ、その考え方、感じ方が解決よりも重要なのである。 恋のためではなく、友情のために、私がこのように長い細々とした手紙を書く時期はもう永久にないであろう。が私がそのような手紙を宛てた久保正夫君は、京都大学を卒えて、同志社大学に君独特のスタイルでのフィヒテ哲学を講じつつあった間に...

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